大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(ネ)1857号 判決

証拠を綜合すれば、訴外小池幸一はかねてから織物仲買業を営んでいる者であるが、営業不振のため昭和三十一年十一月頃不渡手形を出すに至り、当時被控訴人に対する債務金五十八万一千百七十円の外、十数カ所に対し合計金三百三十万円を超える債務を負担する一方、本件不動産以外にこれという資産を有していなかつた事実を認めることができる。

ところで、訴外小池幸一と控訴人との間における本件不動産の売買契約が詐害行為となるかどうかは、右売買契約成立の時をもつて標準とすべきところ控訴人は、右売買契約の成立したのは昭和三十年二月五日であると主張し、また小池幸一から控訴人に宛てた本件不動産に関する売渡証と題する書面の日附は、昭和三十年二月五日と記載されていて、これによれば、あたかも右の日に売買契約が成立したかのようであるが、一方本件不動産所有権移転登記の登記原因証書となつた売渡証書によれば、売買契約は右証書の日附である昭和三十年二月二十八日に成立したかの如く記載されているので、結局これらの書証によつては売買契約成立の日を確定し得ないばかりでなく、後記認定の事実に照らし、右各書面はいずれも日附を遡らせて作成されたものと窺われる。すなわち証拠によれば訴外小池幸一は前記の如く昭和三十一年十一月多額の債務を負担し、その返済ができなくなるや、同年同月九日頃その所有の電話を他人名義に変更し、またその所有の品物を何処かに持ち去つて、同月十一日より一時行方不明となつたこと、及びこれを知つた小池幸一の債権者等約二十人が同月十二・三日頃集まつて小池の財産調査などをしたところ、始めて本件不動産が小池の義兄である控訴人の名義に、しかも行方不明となつた日より二日前である昭和三十一年十一月九日その所有権移転登記がなされていることを知つて驚き、同月十七日被控訴会社代表者樋口卓司ほか債権者数名が控訴人方を訪れ、同人に対し、右所有権取得登記をなじつたので同人は、「自分はとるつもりはない。小池さえ出てくれば、自分の名義になつた不動産は必らず小池に返す」旨答え、右の旨を記載した書面の交付を求められ、男と男との約束に二言はないといつて応じなかつたことが認められる。これらの事実から考えて、訴外小池幸一は、その債務のため強制執行等を受けることを恐れ義兄である控訴人と協議の上、昭和三十一年十一月九日、かねて同人に対し債務を負担していたので、この債務のため本件不動産を控訴人に譲渡することとし、その売渡証の日を遡らせて本件登記手続を経由するに至つたものと推認するに十分である。

以上認定の事実に徴すると、被控訴人の本訴請求は正当であり、これを認容した原判決は相当であるから本件控訴は理由がないとしてこれを棄却した。

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